家具職人の仕事は簡単にいうと家具を作る仕事なのですが、それだけではありません。 実はほかにもいろいろやることがあります。
私は17歳の時に木工所に就職してかれこれ28年になります。もちろん私も家具職人ですし、これまでに数多くの家具職人を見てきました。
この記事では今までの経験や知見をもとに家具職人の仕事内容ややりがい、つらいところ、将来性などを紹介していきます。ぜひ参考にしてください。
家具職人とはどんな仕事?
家具職人の仕事内容は簡単にいうとこんな感じです。
- 図面通りに家具を作る
- 道具の手入れをする
- 機械の整備をする
さらに詳しく紹介していきます。
家具職人は家具図面どおりに家具をつくるのが仕事
家具職人は家具デザイナーや設計士が書いた家具図面をもとに正確に家具を作ることが主な仕事です。
家具職人には大きく分けて「箱物(はこもの)家具職人」、「脚物(あしもの)家具職人」の2種類があります。
大手家具メーカーなどが販売しているような書棚やカップボードなどを作る「箱物家具職人」。
椅子や机、ソファーなど脚がついている家具を作る「脚物家具職人」です。
家具職人は家具を作るために木材のカットや合板のカット、ポリ合板を貼り付けたり、加工、組み立て、塗装、丁番や引手などの取り付けを行います。
家具職人の中にはデザイナーも兼用してデザイン、設計、製作をこなす方もいます。小さな工房などに多いです。
手道具と木工機械の知識と技術が必要
家具職人は「ノミ」や「カンナ」などの手道具手入れや、合板などをカットする「パネルソー」や「横切り」などの木工機械の手入れも行います。
家具職人の具体的な仕事内容
具体的な仕事内容は先ほど紹介した「箱物家具」「脚物家具」どちらを作る家具屋なのかで変わります。
箱物家具職人の場合
家具製作で定番のフラッシュでの箱物家具の製作工程を紹介します。
- 芯材・合板カット
- 芯組み立て
- 芯材と化粧ポリ合板を接着
- 貼り合わせたパネルを正寸カット
- 小口にエッジテープを貼り付け
- 組み立て用のダボ穴加工
- ダボ打ち込み
- 組み立て
- 完成
大きな工場になると、ほとんどの工程が機械化されていますが、小さい工場の場合はダボを使わずにビスなどを使い組み立てることもあります。
ちなみに私は箱物を作ることが多い木工所で職人になりました。
脚物家具職人の場合
椅子作る際の工程を紹介します。
- 木材カット
- 各パーツの作成
- 穴あけ加工
- 組立
- 塗装
- 布地の裁断・縫製
- 椅子張り
- 完成
大きい工場だと各工程を担当することが多いです。小さい工場だと一人で全ての工程を担当する会社もあります。
なお、家具職人へのなり方については別記事で詳しく紹介していますのでこちらも合わせてお読みください。
家具職人になるにはどうすればいい?3つのなり方や仕事内容など紹介
家具職人のやりがい
家具職人をしていて一番やりがいを感じるのは、完成した時の達成感!
山登りで山頂にたどり着いて時のようなすがすがしい感じを味わえます。
大きな工場で一部分の工程しか担当していなかったとしても完成品を見れば達成感を味わえると思います。
それと、難しい家具の図面をいただいた時もやりがいを感じます。
ツキ板や無垢材などを色付けして塗装が仕上がった時もやりがい感じます
家具職人のつらいところ
家具職人のつらいところは修業期間、暑さと寒さ、集中力が必要なところです。順に説明します。
修業期間のつらいところ
家具職人になるためには必ず必要な修業期間はけっこうつらいです。
なれない作業をするし、収入はすくないし、職人には怒られますし。
もちろん技術を学ぶ楽しさはありますが、なかなか思い通りの家具を作れなかったり、失敗したりの繰り返しの時期がつらいこともあります。
工場の暑さ寒さ
家具職人には仕事中のほとんどが工場での作業になります。
工場は空調設備などなくて、夏は扇風機だけです。それも工場に数台しかないことが多いです。最近は空調服を着ている人も多くなりました。
冬は火災の危険もありますので暖房器具などは使わないです。たくさん着込めばよいのかもしれませんが、着込みすぎると作業しにくくなるので冬は寒い中の作業になることが多いです。
集中力が必要
家具製作は自分の技術で仕上がりが変わります。仕上がった家具を見ればどれぐらい集中して作ったのかわかります。家具製作中は常に集中して作るので結構つらい時もあります。
それに集中しておかないと怪我をする確率も増えます。家具製作は昇降盤や横切りなど刃物での作業が多いです。注意力が低下すると危ないんです。
家具職人の就職先
家具職人の就職先は大きく分けて3種類あります。
- 家具メーカー
- 家具工房や木工所
- 木工系学校の講師
各就職先の詳細を紹介します。
家具メーカー
家具メーカーでは機械化された工場で家具を大量に生産します。その分家具職人も多く必要です。
就職後すぐは簡単に工程の機械を担当して、慣れてきたら組み立てなどの難しい工程に移っていきます。
見習い期間として3~5年くらい働くことが多いです。
家具メーカーで収入を増やすには、資格を取得して工場長などを目指すのがおすすめです。
資格には、家具製作技能士、木材加工用機械作業主任者などがあります。
家具工房や木工所
家具工房や木工所では店舗家具や公共施設の家具などメーカーとは違い単発で必要な家具を製作します。
工場の大きさにもよりますが、家具職人が担当する家具を1から作ることが多いです。
見習い期間は職人の補助として家具製作の簡単な部分を手伝う形になります。
下地の材料をカットしたり、のり貼りなどをする感じです。
ひとりで家具製作のすべてをできるようになりたいのであれば、家具工房への就職をおすすめします。
木工系学校の講師
家具について学ぶことのできる、職業訓練学校や専門学校は全国各地にあります。
学校を卒業して家具職人になってからの話になりますが、職業訓練学校や専門学校などの講師に招かれることもあります。
募集をしている場合もあります。
就職ではありませんが、起業して自分の工房などを作る職人さんもいます。
家具職人の将来性
20年、30年先のことは正確にはわかりませんが、生活していく中で家具はなくならないのではないかと思います。
なので、家具職人という仕事も簡単にはなくならないでしょう。
大手の家具メーカーなどは人件費を削るため、製品制度を高めるために機械やロボットでのオートメーション化をどんどん進めていくことでしょう。
そんな時代だからこそ、家具職人という人間にしかできない部分が大事にされていく世界になると思います。
とくに言葉やデータではおさまらない木の個性を生かして作る家具は、AIや機械では作りようがないでしょう。
家具職人を支える職人の問題
家具職人を支えてくれる「ノミ」や「カンナ」などの手道具を作る職人さんも高齢化が進み、
さらに「跡継ぎがいない」とか、「稼げないから継がせない」という話をよく聞くようになりました。
しかし、最近は本だけではなく、YouTubeやブログなどで職人の技術を紹介する方も多くなりました。
なくなりそうな技術も、いろいろな形で職人さんの技術を受け継げるようになると思います。
また、露出が増えることによって、職人になりたい人にも情報が届くようになります。
家具職人への転職方法は別記事で紹介しています。こちらも合わせてご覧ください。
家具職人への転職は未経験でもできる?転職のポイントや方法を解説
まとめ
家具職人の仕事内容を紹介しました。
- 図面通りに家具を作る
- 道具の手入れをする
- 機械の整備をする
図面通りに家具を作るのも楽しいですが、自分の思い通りに家具を作れるのはとても楽しいです。
見習いの間はきついこともありますが、その先の楽しさのほうが何倍も大きいです。