家具職人に独学でなれるのか。
結論としては独学でも家具職人になることはできます。しかし、何から学んでいけばいいのかよく分かりませんよね。この記事では独学で家具職人になる流れを紹介します。
私は17歳で木工所へ就職して2023年で28年目になる家具職人です。
家具職人の実体験をもとに家具職人に独学でなれる方法を紹介していきます。
この記事を読めば、家具職人に独学でなる方法がわかると思いますのでぜひご覧ください。
家具職人に独学でなれる?
冒頭でもお話しましたが、家具職人には独学でなれます。 でも、あまりおすすめできる方法ではありません。
しかし、独学にも良い点があります。家具職人に独学でなるメリット・デメリットをまとめてみました。
家具職人に独学でなるメリット・デメリット
独学のメリット・デメリットを以下にまとめてみました。
メリット
- 自分のペースで学べる
- 作った家具全てが自分の物
- オリジナル性が生まれやすい
家具職人に独学でなるメリットは自分のペースで学べることでしょう。本や動画を見ながら空いた時間などに学んでいくことができるので、本職をしながら修行することができます。
当たり前ですが作った家具が自分の物になります。工房へ就職して製作した場合は、工房の物になるので自由に販売とかできないです。
独学では、オリジナル性を生みやすいと思います。誰にも指示されないので好きなようにデザインできます。
デメリット
- 弟子入りした方が生きた知識を学べる
- 作業工具などを全て自分で用意しなければいけない
- 職人になるまでに時間がかかる
- 機械や材料などの仕入れ先がわからない
木工機械や手道具などの使い方や家具製作のコツというのは、本を読むよりも直接家具職人に学んだ方が早いです。
家具職人が今までに蓄積した知識や技術を実際に見ながら学べるからです。
可能であれば工房や木工所に就職し、家具見習いとして学んだ方が職人になるまでの時間は早いでしょう。
独学以外の家具職人になる方法は別記事で詳しく紹介していますので、こちらも興味があればご覧ください。
家具職人になるにはどうすればいい?3つのなり方や仕事内容など紹介
現状では工房に就職できない場合や、早くなくてもいい、とにかく自分の力で家具職人になりたいって方の為に、
家具職人に独学でなり、さらに自分の工房を持つまでの流れを考えてみました。
ここからは私ぼ自分の工房持ちたいなぁという考えも踏まえて紹介していきます。
家具職人に独学でなるまでの流れ
家具職人に独学でなるまでの流れはこんな感じになります。
あくまで私だったらこうゆう流れで自分の工房を持つまでになるだろうという、 理想的な流れなので参考程度にしていただけると幸いです。
- 家具職人とはどんな仕事なのか知る
- 作りたい家具の構造を学ぶ
- 木材の加工方法を学ぶ
- 塗装方法を学ぶ
- 家具デザインを学ぶ
- 木工機械や材料の仕入れ先
- 実際に自分で家具を作る準備
- 自分で家具を作ってみる
- 作った家具を販売してみる
- デザインアワードに出品・入賞して有名になる
- 工房を作る
順番に説明していきます。
家具職人がどんな仕事なのかを知る
まずは、家具職人がどんな仕事なのか理解しておきましょう。
家具職人とは
家具職人は名前の通り家具を作る職人のことです。 さらに、今回は自分の工房を持つ予定なので家具デザインと製図、販売価格なども自分でできる必要があります。
家具職人には大きく分けて2種類あります。
- 箱物家具職人(はこものかぐしょくにん)
- 脚物家具職人(あしものかぐしょくにん)
「箱物家具職人」は大手家具メーカーなどが販売しているような書棚やカップボードなどを作る職人。
「脚物家具職人」は椅子や机、ソファーなど脚がついている家具を作る職人です。
家具職人は家具を作るために木材のカットや合板のカット、ポリ合板を貼り付けたり、加工、組み立て、塗装、丁番や引手などの取り付けを行います。
家具職人の中にはデザイナーも兼用してデザイン、設計、製作をこなす方もいます。小さな工房などに多いです。
ひとりで工房を経営している方は脚物家具職人の方が多いです。
家具職人の仕事内容は別記事で詳しく紹介しています。
ここからは主に脚物家具を作る家具職人になる前提で流れを説明していきます。
作りたい家具の構造を独学する
家具の構造を知らなければ作ることはできません。どうやって家具を作り上げているのかをしっかり学んでいきましょう。
例えば、椅子などを解体してパーツごとに分けてみるなどするのもおすすめです。
椅子の場合は座面に背もたれを脚をどのように接合しているのか、どうやって木材を削り出しているのか、接着剤の種類や合板(ベニヤ板)の規格サイズや種類など、覚えることは多いです。
木材の加工方法を学ぶ
ある程度自分の作りたい家具の構造を理解したら次にどんな機械や道具で家具を作っているのかを調べていきましょう。
- 木工機械でできること
- 手作業でしかできないこと
木材の加工のほとんどは木工機械で加工することができます。しかし、機械の価格が高いし、たまにしか使わない機械などもあるのでよく使う木工機械を最初に購入することになります。
よく使う機械としては、
- 縦挽き丸鋸盤(リップソー)
- 手押しカンナ盤(ておし)
- 自動カンナ盤(じどうかんな)
- 昇降盤(しょうこうばん)
- 軸傾斜横切り盤(よこぎり)
- ボール盤
- 集塵機
- プレス機
木工機械の使い方一例
木工機械でできることを見ていきましょう。
リップソーは木材の幅を粗寸法でカットします。
手押しカンナは木材の反りの調整や二面削って90度にする機械です。
自動カンナは木材を削って厚さを調整します。
昇降盤は木材を寸法幅にカットしたり、敷居溝を削ったり、傾斜にカットすることができます。
よこぎりは木材の長さを直角や傾斜にカットする機械。
ボール盤は木材に穴をあけます。
集塵機は各木工機械に接続し木くずを集めます。
プレス機は板と板の貼り合わせるときに抑えつける機械。
工房には最低限上記で紹介した木工機械があると作業が効率化できます。
木工機械がない場合を考えて見ましょう。今紹介した機械を手作業の置き換えるとこんな感じになります。
- 縦挽き丸鋸盤(リップソー)→ 丸ノコや縦引き手ノコで切る
- 手押しカンナ盤(ておし)→ 電動カンナ・カンナで平らになるまで引く
- 自動カンナ盤(じどうかんな)→ 電動カンナ・カンナで平行になるまで引く
- 昇降盤(しょうこうばん)→ 丸ノコ・手びきノコや溝カンナで切る
- 軸傾斜横切り盤(よこぎり)→ 丸ノコ・手びきノコで切る
- ボール盤 → 電動ドリルで穴開け
- 集塵機 → 掃除機・ほうきとちりとり
- プレス機 → クランプで締め付ける
木工機械はなくても家具製作は可能ですが、時間がかかりますし、手道具での加工で精度を出すのはすごくむずかしいです。なのでなるべくは木工機械の導入をおすすめします。
家具の塗装方法を学ぶ
木材は形にするだけでは商品として成立しません。塗装して初めて商品となります。 木部塗装にもいろんな方法があるので覚えておきましょう。 木部塗装には大きく分けて2種類あります。 造膜型(ぞうまくがた)と含浸型(がんしんがた)です。
造膜型はいわゆるペンキの類で木を塗膜で覆う塗料のことです。
含浸型は木に浸透する塗料で木の質感を損なうことなく使える塗料。含浸型は浸透型とも呼ばれます。
どちらの塗料にも水性タイプと油性タイプがあります。水性タイプは匂いも少なく、安全性が高い塗料が多いです。乾かないうちは刷毛なども水で洗うことができるので手軽に塗装できます。
油性タイプは塗装の膜が強いけど、匂いが強いです。刷毛などを洗うときはシンナーなどを使うことになります。
さらに、塗料には艶(ツヤ)の調整ができます。 ツヤなし(0分艶または10分ツヤ消し)〜ツヤあり(10分艶または0部ツヤ消し)で調整します。
家具デザインの方法を独学で学ぶ
家具デザインは自分のセンスを生かし家具を作り上げる上で大切です。しっかり学びましょう。
独学で家具デザインを学ぶには本やネットでの学習がおすすめです。
実際に有名デザイナーの展示会に行くのも良いでしょう。有名デザイナーが作っているテーブルや椅子、ソファーなどを見たり触ったりすることで自分の作る家具との違いを感じることができます。
家具図はパソコンでCADソフトを使い書くことになります。
CADにはいろいろな種類がありますが、有名なところでは、
3D CADはRhinoceros(ライノセラス)やFusion360(フュージョン360)
2D CADはAutoCAD(オートキャド)やJW CAD(ジェイダブリューキャド)
などがあります。
私はAuto CADとJ W CADを使っています。NCルーターにデータが必要なんです。
ある程度学んだら実際に自分が作るテーブルや椅子のデザインし、製作図を作ります。 そして、製作に必要な材料のサイズを拾い出しましょう。
ついに、自分で作る準備に入ります。
実際に自分で家具を作る準備
作り方がわかり、作る準備に入ります。ここから独学のハードルが上がります。
- 作業するスペースの用意
- 近隣への騒音対策
- 作業道具の購入
- 材料の購入 作業するスペースの用意
木材を加工できる場所を確保する必要があります。
室内だと木材を切った時などかなり木クズやほこりが出るので工夫が必要です。
プラダンなどを床に敷いて、木屑の掃除がしやすいようしましょう。
近隣への騒音対策 近隣への騒音対策もクリアするのが難しい問題です。
しかし、家具職人になるまで修行するのであれば時間がある時にすぐ製作にかかれる環境が大事です。
電動工具や手道具を使うときの音は結構大きいので、昼間のうちに大きい音のする作業をして、夜は音のでない作業をするみたいな工程を組みましょう。
壁に発泡スチロールを設置することで音が外部にもれるのをかなり抑えることができます。住まいが2階以上の場合は床にも設置したほうが良いでしょう。
それと、塗装する場合は匂いにも配慮が必要です。
油性塗料を使用する場合はかなり匂いが強いです。
近隣の方から苦情がくる場合があるので気をつけましょう。
自宅に作業スペースが確保できない場合は木工作業場や工房のレンタルスペースを借りるという方法もあります。
レンタル作業場やレンタル工房などで検索すると見つけやすいです。
例えば、カインズの店舗内にあるカインズ工房などがあります。
作業場所の確保が済んだら、手道具や電動工具などを購入します。
作業道具はとりあえず、安い電動工具や手道具でも良いと思います。中古でも気にしない方はメルカリやヤフオクなどで探すと良いでしょう。中古品は使えるか注意深く確認しましょう。
家具製作に必要な作業道具 手道具
家具製作に必要な手道具はこんな感じです。
- ノコギリ
- ノミ
- カンナ
- ケビキ
- 差し金(さしがね)
- コンベックス(巻尺)
- 金槌キリ
- ヤスリ
などを用意します。
電動工具
電動工具はこんな感じで用意しましょう。
- ジグソー
- 丸のこ
- オービット
- サンダー
- インパクトドライバー
- 電動ドリル
- トリマー
材料の購入
材料はネット販売やホームセンターで購入できます。
最初の木材は、加工がしやすく比較的安価なパイン材やラバー材(ゴムの木)あたりが良いでしょう。
将来的には製材所からの仕入れも視野に入れておきましょう。
実際に作ってみる
まずは、安くて加工しやすい木材で接合部分のつなぎ方を練習しつつ、椅子やテーブルなど、作りたい家具を作ってみると良いでしょう。
木材のつなぎ方にはこんな種類があります。
- 継手(つぎて):木材の木口(こぐち)の接合。長手方向に継ぎ足す加工
- 矧手(はぎて):木材の木端(こば)の接合。板材などを横方向に継ぎ足す加工
- 接手(つぎて)・仕口(しぐち):**木材に角度を持たせて継ぐ加工
- 組手(くみて):箱を作るときなどに板材を角度を持たせて継ぐ加工
各パーツを切り出して、組み立て、かんなや紙やすりなどで仕上げてから塗装します。
最初のうちは販売している商品のように作るのはむずかしいですが、作っていくうちに上手になります。上手に作れるようになってきたら、作った家具を売ってみましょう。
作った家具を販売してみる
ハンドメイド商品を販売できるサイト(minneやCreemaなど)で販売して、次の家具作りの資金にします。作っては販売を繰り返して自分のレベルを上げていきましょう。
そして、上手にできた商品をデザインアワードなどに出品していきましょう。
デザインアワードに出品・入賞して有名になる
オリジナリティのある家具で製作して、日本や世界で開催されるデザインアワードやデザインコンペに出品し、有名になりましょう。
有名になることでブランド力が高くなり、将来自分の工房で製作販売する家具の価値を高めることができ、販売価格を高く設定しても売れるようになれば生活も安定していくでしょう。
世界で活躍できるような家具職人になりたいですね!
工房を作る
今回の流れでは工房を作るタイミングを最後にしていますが、自宅での家具製作が難しい場合などもっと早く加工場所が欲しい時には、リスクは大きいですが、先に工房を作っても良いと思います。
貸工場を探す将来は自分の工房を持つ
家具製作は大きな音や塗装の匂いなどがあるので、大抵の場合は郊外に工房を作ることになります。
まずは貸工場などを探して実績を作り、経営が安定したら自分の土地を購入して工房を作るのが良いでしょう。
木工機械や材料の仕入れ先をどうするか
木工機械は大抵の場合、木工機械を専門に販売している会社から購入することになります。 そ
れと、チップソーやトリマービットなどは再研磨する必要があるので、定期的に工房に来てくれる機械屋さんを探します。
材料の仕入れる会社も探します。
仕入れ先は製材所や合板販売などしている会社になります。
「〇〇木材」や「〇〇ベニヤ」など〇〇に地域名が入る会社が多いです。
蝶番や引き手などの金物の仕入れ先も探しましょう。
工房を経営していく上で考えていくこと
- 資金 資金が足りない場合は、日本政策金融公庫や銀行から開業資金として借入れます。
- 集客方法 SNS発信やホームページを作成してネットからの集客や、チラシのポスティングなどでの集客、家具販売店舗に置いてもらうなどがあります。
- ネットでの販売 自社ECサイトを作成して販売するのも良いでしょう。
家具を製作・販売して運営していく
家具製作はシリーズで製作するのが良いでしょう。
例えば、テーブル、椅子、ソファ、スツール、チェスト、食器棚、本棚、ベッドなどです。
シリーズを作る理由としては、売上を上げることができるからです。
例えば、新居を購入するお客さんなどは家具のデザインを統一することが多いです。そんな時にシリーズを用意しておけば、まとめて購入してもらえる可能性が高くなります。
ここまでくればあとは、職人や見習いを雇って事業として拡大していくか、自分のレベルをさらに上げて販売価格を高くしていくか、現場を安定させていくかという感じでしょう。
ひとりで工房を経営するときの注意点
ひとりで工房をやっていくのには気をつけることがあります。
怪我や病気 長く運営していくと、怪我や病気で家具製作ができない局面を迎えることもあります。 自分が家具を作れない時でも経営を続けることができるように、「家具職人を雇っておく」・「保険に入っておく」など先回りして考えておくことも大事です。
まとめ
家具職人に独学でなれるのか?メリット・デメリット・独立までの流れを紹介しました。
どうでしょうか、独学で学び自分の工房を持つまでのイメージができたでしょうか。
難しいそうであれば、とりあえず職業訓練学校や、小さな工房へ就職し見習いから習うなど、人に頼ることをおすすめします。
その他の家具職人への転職方法などは別記事で詳しく紹介していますので合わせてお読みください。